ルーツから学ぶ、刃物との付き合い方

 

暮らしの道具として欠かすことが出来ない、刃物。

古くから世界中で作られてきた刃物にはルーツに違いがあることで、

それぞれが多様な特徴を持っています。

今回は国内と世界の3つの都市で作られる刃物をご紹介します。

 

 

【家庭用の刃物から・兵庫県小野市】

 

 

兵庫県南西部は播州と呼ばれ、古くより刃物の生産地として知られてきました。

播州地方にある小野市は中でも鋏(はさみ)や鎌といった家庭用の刃物を製造し続け、

「小野の鋏」、「小野の鎌」と名称がつくほど、その高い品質で歴史に名を刻んできました。

230年余りもの歴史を持つ小野の刃物は、カミソリから始まり、

握り鋏、包丁と多様な刃物を生産してきたのだそう。

切れ味、デザインがともに高く評価され、今でも日常で使い続けられる刃物として認識されています。

 

播州刃物(ばんしゅうはもの)は、こうした小野の金物の歴史を汲んで

今度は世界へ広げるためにとの想いで始まったブランド。

小野の金物が家庭用の刃物に注力していたというルーツをそのまま映すかのように、

毎日の暮らしで使える刃物を製造しています。

 

 

潔い佇まいが美しい、播州刃物の裁鋏。

裁鋏は古くに「ラシャ切りばさみ」とも呼ばれ、

ラシャ(厚手の毛織物)を切る鋏として明治時代から使われてきたと言います。

その後、小柄な日本人でも使いやすいようにと改良が重ねられ、

切れ味と使い勝手の良さが追求された現在のデザインが確立されました。

とはいえ、細かな作りや使われる素材はさまざま。

播州刃物では、刃の部分に高炭素の鋼で作られた刃を使用しています。

ステンレス鋼に比べて摩耗が少なく、抜群の切れ味を長く保てるという利点があり、裁断面も美しく保ってくれます。

 

 

変わってこちらは播州刃物の握り鋏。

U字型の握り鋏は名前の通り握るだけで切ることが出来るという容易さがあります。

古くは着物の仕立てにも使っていたのだろうと連想させる握り鋏は、

ほつれ糸を切ったり刺繍をしたりと、裁縫には欠かすことの出来ない道具のひとつです。

播州刃物の握り鋏は、裁鋏と同様に高炭素の鋼で作られており、

無駄を削ぎ落としたシンプルなデザインは代々続く定番の形で、

女性でも扱いやすく、家庭用の刃物を得意とした小野の刃物ならではの良さを感じさせます。

 

 

播州刃物では、裁縫用の鋏だけでなく生花用の鋏も豊富。

こちらの生花用鋏は、持ち手の先がくるりとした形が印象的。

この形は植物のワラビに似ていることから「わらび手」と呼ばれており、華道に使われる鋏の一種です。

丸みを帯びた形が手のひらに柔らかくフィット。

刃の角度が鋭角についており、コンパクトなので力をかけすぎなくても

茎の断面を潰すことなくスパッと切ることが出来ます。

 

【農工具の刃物から・新潟県三条市】

 

 

新潟県の三条市もまた、刃物生産がさかんな土地として知られています。

播州地方が家庭用刃物から始まった一方で、

こちらは江戸時代に和釘の製造が始まったことが刃物の特産地としてのきっかけでした。

農家の副業とされた和釘生産はその後鍛冶業へと移り、

鎌や包丁、釘や鋲(びょう)の製造が広まっていったといいます。

 

 

三条市で創業したSUWADA(すわだ)は「喰切(くいきり)」と呼ばれる、

釘の頭や針金といった硬いものを切るための工具生産からスタートし、

現在ではニッパー型のつめ切りが高い評価を得ています。

喰切生産の際に積み上げられた、両側の刃がぴったりと重なることで、

硬質なものさえもしっかりと切るという技術はつめ切りにも継承されており抜群の切れ味を誇ります。

 

 

ニッパー型のつめ切りにはシリンダーバネが入っており、

開いた持ち手にしっかりと力が加えられることが出来、

刃が大きく開くので変形した厚い爪も切ることが容易です。

爪を割ることなく、断面もスムーズに切ることが出来るのも、SUWADAのつめ切りならでは。

三条の刃物生産の技術が現代のものづくりに活かされている証拠です。

 

 

和釘生産から始まった三条市の金物文化は、釘以外にもさまざまな大工道具の生産を促したと言います。

鉋(かんな)もそのうちのひとつ。

もっとも盛んな時代では、約70社が鉋刃を製造していたのだとか。

しかし戦後は時代の波の中、鉋刃製造のみを行う企業は減っていき、

現在では約10社が残る程度になっているのだそう。

そんな中、三条市に鉋台づくりから始めた台屋(DAIYA)は

現在でもその技術を「かつおぶし削り器」という新しい製品に活かしものづくりを続けています。

 

 

今ではパックに入ったかつおぶしが主流ながら、

ひとつひとつかつおを手で削り、かつおぶしを作っていた。

その文化が今に継承される、台屋(DAIYA)のかつおぶし削りは、

鉋台生産の技術をもとに、より現代で使いやすい形を求め、コンパクトかつスタイリッシュに作られています。

 

 

刃には新潟県三条市で作られる炭素鋼SK5の鋼を使用。

研ぎやすいのに長切れするという相反する性質をもった刃は、力を入れずにかつおぶしを削ることが出来ます。

土台となっている木材には白樫のほか、ウォルナットやブナといった天然素材を。

削りたてだからこそ実現する新鮮さをご家庭で堪能することが出来ます。

 

【ナイフの名産地・ドイツ、ゾーリンゲン】

 

 

お次は世界の刃物から。

ヨーロッパの刃物の街として名高い土地のひとつに、ドイツのゾーリンゲンがあります。

ゾーリンゲンは中世の時代からナイフを始めとした鍛冶生産がさかんに行われ、

現在でも1000社以上の刃物メーカーが名を連ねています。

Robert Herder(ロベルトヘアダー)もゾーリンゲンで1872年に創業した刃物ブランド。

Robert Herder(ロベルトヘアダー)のナイフの特徴は

その刃付け方法で、薄く研ぎ澄まされた刃がくさび型に柄に取り付けられていることにあります。

今も手で行われているこの刃付け技術により折れてしまう懸念がなく、

また、職人が指に付けたリングに刃を当てると、湾曲するほど薄く仕上げられた刃は

見事な切れ味を持つのも特徴です。

 

 

Robert Herder(ロベルトヘアダー)のオールドジャーマンナイフは

刃先が丸みを帯びており、「切る」という動作だけでなく「載せる」といった動作も簡単。

パンにバターを塗るために、果物や柔らかい野菜を切るといった

ちょっとした作業が行いやすいのも、薄く作られた刃にあります。

調理の際に使うナイフとしてだけでなく、テーブルウエアのひとつとして重宝出来る存在です。

 

 

 

・刃物を長く使うためには、「切れ味を保つ」ことが先決です。

裁鋏は布のみを、生花用鋏は植物のみを、と用途以外のものに使わないことを厳守することで

本来の切れ味を保つことが出来ます。

 

・刃物は粘着性のあるテープや接着剤、そして水が付着すると

切れ味が悪くなるだけでなく、錆びが生じる可能性があります。

粘着性のあるものには使わない、水に濡らさないことを第一に

もし付着してしまったら、柔らかい乾いた布ですぐに拭き取るようにしてください。

 

▽修理のご案内

 

ZUTTOでご購入頂いた下記ブランドの商品では、メーカーで修理を受け付けています。

ご要望の場合は弊社カスタマーサポートまでお問い合わせくださいませ。

ZUTTOカスタマーサポート:support@zutto.co.jp

 

・播州刃物:研ぎ直し、柄の修理

・SUWADA:つめ切りメンテナンス

・台屋:鉋刃の研磨、鉋台(木部)直し、クルミオイル塗布、試し削り 

 

 

 

 

 

 

 

投稿者: 植田 日時: 2017年03月04日 11:00 | permalink

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