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リネンのエイジング・ラボラトリー(前編)

 

 

 

喉が渇いて目覚めた午前2時、
水を飲みにキッチンに立つ。
しんと寝静まった家の中で
キッチンにかけてある使い慣れたリネンを見たら
なぜか心底ほっとしたのです。

普段使いのものが、ちゃんとそこにあるという安心感。
1枚のキッチンクロスに、
心動かされるということもあるのですね。

普段使いの良さとは、何でしょうか。

日々使うことで生まれる愛着についてもっと知りたくて、
fog linen workオーナー、関根由美子さんを訪ねました。

 

 

下北沢駅から緩やかな坂を下ると現れる、
3階建ての四角い建物。
それが、fog linen workのお店です。

 

 

 

 

 

-----前からずっとここにあるような、とても居心地が良い空間ですね。

 

1階がfogのお店で2階は撮影やワークショップに使うスペース、
そして3階部分をオフィスとして使っています。2階では、
最近はお茶を淹れるワークショップをしたり、
あとはカリグラフィーの教室の予定もありますね。
以前も下北沢駅から歩いて少しの場所にお店を構えていたんですが、
この場所へ移ることを機に、建物をつくるところから空間作りをしました。

 

-----そうなんですね。関根さんのご自宅もこんなテイストですか?

 

そうですね、お店には自分が使いたいと思うものを置くことを
大切にしているので、それを置くための空間もおのずと似てくるというのは、
やっぱりあると思います。

あとは、最近ちょうど自分の家を建てようかなって考えたことがあるんですが、
こんな感じで…とあれこれ考えていたら、
このfogの建物とほぼ同じになっちゃったんです(笑)

 

 

 

 

 

-----何だか分かる気がします(笑)でも、面白いですね。
お店作りで、中に入るもの(商品やfogの世界観)が
先にあってそれを入れる箱(建物)をどうしようか?と考えて生まれたものと、
プライベートな空間作りが、自然と似てくる。

 

fog linen workとしてものを作る時もそうなんですが、
明確に「テーマはこれ」と言葉で表現することはないんです。
自分が使いたいと思えるかどうか。本当に欲しいと思えるかどうか。

とても感覚的なことのようですが、
言葉では表せなくてもずっと変わらない軸として、
ブランドとしてのものづくりにも、
例えば自分の家作りのように私的なことにも繋がっているんだと思います。


-----明確なテーマを言語化しない。
これって逆に難しいことのような気がします。


fog linen workとしては、「普段使い」というのが1つのテーマというか、
コンセプトにしている言葉ではありますが、
シーズンテーマとして今回はこれ!と決めることはしないですね。

 

 

-----年に2回発行されるカタログ、いつも楽しみにしています。
季節を追うごとに新しいアイテム、柄が増えていて、
その時にしかない雰囲気を感じるというか。
でも、季節ごとのテーマは特に設けていないんですね。


リネンアイテムの企画は一人でやっているというのもあって、
ものづくりの時点で誰かと共有するためにテーマを
あえて言葉にする必要がないというシンプルな理由です。
個々のテーマに添ってものを作るということはしませんが、
例えばその時に旅行した国や、会った人が影響していることが多いみたいです。

 

 

 


-----ナチュラル、ホワイトのような定番とは別に、
入れ替わっていく新柄・カラーもありますよね。
そういったバリエーションを考える時に気をつけていることはありますか?


いつも同じだとは思われない目新しさ。
それから、記憶にすっと入ってきてくれて、
でも、いつまでも残るのではなくすっと消える感じ、
といったところでしょうか。

例えば、自宅で使っているテーブルクロスは20枚くらい
バリエーションがあるんですが、お客様が来た時に、
前と同じ柄だなって思わせてしまうのは、勿体無いですよね。
でも逆に、ある1枚だけが記憶に残るというのも何か違う。

洋服だとまたちょっと違うのですが、
インテリアファブリックとしてのリネンであれば、
柄やカラーの面でも、普段使いしやすいfogらしさをベースにしつつ、
ちょっとした目新しさを大切にする。そんな考え方です。

 

 

-----新しい何かを作らなくては、という
生みの苦しみのようなものはありますか?


ないです!新しいカタログを出す時には7、8柄が入れ替わることが多いですが、
無理に新色を出さなくちゃと考えることもないですし。
そうやって、いらないものを増やすよりは、
欲しいものがあった時に増やす方が良いなって。

 

-----なるほど。これがお気に入り、というとっておきの柄はありますか?

 

うーん、今シーズンのカタログに載っている新柄が一番でしょうかね。
季節がめぐって新柄を出すたびに、いつもそう思うんですけれど(笑)

 

 

 

-----普段使いに適しているものの良さって、いろいろ
なものに当てはまることだと思います。
そうした「もの」に共通の何か。これって、何でしょうか?

 

リネンはもともととても強い素材です。
自然界にある植物性繊維の中では最も強いと言われているくらい。
水にも強いし、すぐに乾いて汚れも落ちやすい。
でも例えば、陶器の器やガラスの道具は、落としたら、
ただその一瞬の出来事で割れてしまうという可能性がある素材。
そうやって、もともとの素材が持っている特性の違いはあっても、
私自身がものを選ぶ時は「また、同じものを買いたいと思えるかどうか」
という視点で見ていますね。

 

 

 

 

 

-----また同じものが欲しいと思えるか、ですか。

 

はい、例えば、fogのアイテムを使ってくださっている方が
「あぁ、また同じものを買い足したいな」と思って頂けるような存在で
ありたいというのと、現実に同じものが手に入る状況であること、
つまりブランドとして「作り続ける」ということですね。
作り手としてそう思うのと合わせて、使い手として暮らしの道具を選ぶ時にも、
自分が長く好きでいられるか問いかけた時に、
「やっぱりこれが良い」と思えるかどうかが大事だと思います。

リネンのお話に戻りますが、fogのアイテム第一号として誕生した
キッチンクロスは、仕様変更は一度もせずにここまで作り続けてきました。
新しいアイテムや新色を生み出すのと同時に、
そうした定番が作り続けられることの大切さ。
使い手として大事だと思うことが、
そのまま作り手としての考えになっているのかもしれません。

 

-----リネンをはじめ、布って「もう使えないな」という
明確な線引が難しい素材だと思うのですが、
関根さんはどういう時に、替え時だと思われますか?


私自身は、実は新しいリネンのさっぱりした感じが好きなので、
新品に替える時はあまり躊躇しないんです。
もちろん、用途や洗濯の回数などで経年変化も変わってくるので、
これといった替え時のタイミングはないのですが、
例えば年末年始にリネンを一新すれば心もさっぱりするし、
来客がある時には大きめのリネンも新品をおろそうか、という感じでしょうか。

 

 

 

 

-----リネンを変えて気分一新。ものをきっかけに心も変わるのは、
面白いですね。ちなみに古くなったリネンは、どうされていますか?

 

例えば、これ。擦り切れてしまったリネンを、
穴を避けて小さくカットし、ミシンで縫い合わせたものです。
もとは同じ「ナチュラル」のリネンなんですが、
製造時の個体差で色みが違ったり、経年変化でニュアンスの
違うカラーになっていたりと、繋いでみると表情が出てきます。

 

-----繋いだ上から、さらに模様が入っていますね。

 

はい、パッチワークしたリネンの上から、フリーハンドで
くるくるとミシンでステッチを入れています。
見た目も面白いですし、ステッチをかけた分生地が丈夫になるんですよ。
こうして大きな一枚布にして、カーテンとして使うこともあれば、
小さくカットして四方をミシンで縫って、
お皿とお皿の間に引くクッションとして使うこともありますよ。

 

 

 

 

 

-----リネンを長く愛用するための心得はありますか。

 

乾燥機さえかけなければ、「ああしちゃ駄目、こうしなきゃ駄目」
という決まり事は、ほとんどないので安心して使ってください。
普通のお洗濯用洗剤で、ジャブジャブ洗って、
気持ちよく乾かす。これだけです。
パリッとさせたい方にはアイロンをおすすめしますが、
私はテーブルクロスでもベッドリネンでも、アイロンはかけずに
使ってしまいます。洗濯して乾かした後、
畳んでから重ねてしまっておくと、程良くまっすぐになりますし(笑)

 

-----fogの製品はリトアニアで製造されていますが、リ
トアニアリネンとしての特性はいかがでしょう。

 

アイリッシュリネン、フレンチリネン等、リトアニアの他にも
生産地によっていろいろなリネンがあります。
アイリッシュ、フレンチなどは細い糸を使って織り方も繊細、
リトアニアリネンはざっくりとした織り方、というような
イメージを持たれることも多いのですが、
実は織り方の技術や製法で明確な差異はほとんどないと言われています。

 

 

 

 

 

リトアニアは夏は暑く冬寒いという、麻の栽培に適した気候なので、
古くから生産が盛んだったということもあり、
今でも糸の製造から布を織るまで国内生産していますが、
近年ではヨーロッパのリネンメーカーもリトアニアで
作られたリネンの糸を輸入して、自国で織り上げるということも多いようですね。
そういった面で、変わらない生産体制があること、
国内で糸を作れることがリトアニアリネンの良さの1つ。
これが、適正な価格で良いものを作り続けられるということに繋がっているんです。

 


今まさにfogのリネンをご愛用頂いているという方には、
是非、時には新しいリネンを買い足して使うのをおすすめします。
そうすることで、長く使ったものの変化と、
新しいものの良さが一緒に味わえて、もっと愛着が増しますよ。

これから使ってみようかな?という方には、
とにかく丈夫で長持ちするものなので、
どんどん生活に取り入れて使って頂けたら、とても嬉しいです。

 

 

 

この取材でfogのお店に伺ったのは、とても暖かな春の日でした。
ちょうどソメイヨシノが散り始めて、
八重桜の盛りへと移り変わるくらいの4月初旬。
取材の帰り道、持っていたfogのハンカチに
桜の花を拾い集めてきました。

取材中、投げかけた質問に
いつも迷うことなくクリアなお答えを
返してくださった関根さん。
リネンジャケットとシャツのコーディネートが
とても素敵なのが印象的でした。

お店作りと家作りの無意識な関連性という話題。
ご自身が刺繍したという愛猫のモチーフ。
お店のカウンターで丁寧にアイロン掛けをするスタッフ。
そして、じっくりとリネンを手に取るお客さん達。

自分が好きなものを買って使えるということ。
また使いたいなと思えること。そして現実に手に入るということ。
これって嬉しいことだなと改めて思いました。

コンテンツ後半では、関根さんに伺ったお話をもとに、
リネンのエイジングについて考えていきます。
洗うと、どれくらい縮むのか?
リネンと相性が良いものとは?などなど。

それでは次回もまた、ここでお会いしましょう。

◇fog linen work取り扱い商品一覧はこちら

 

 

▼リネンのエイジングラボラトリー 後編はこちら

リネンのエイジングラボラトリー後編

投稿者: 斎藤 日時: 2015年04月16日 09:00 | permalink

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