Keep it long, treasure it long.

深い紺色を表現する、焼群青

時間は、目で見ることが出来ない不思議な存在です。たとえば、何かに夢中になり、あっという間に過ぎゆく愉しい一時も、誰か大切な人を待ちこがれる時間も、あるいは夜眠りについている時も。時計の針は淡々と時を刻み続けています。

そんな1秒ずつ直線的に進む時間と、もう一つ、大きな時間の流れがあります。それは歴史という、今までに積み上げられた悠久の時間です。

まるで時に色を付けるように

日本画を描く際に用いられる「岩絵の具」を文字盤にあしらった腕時計、はなもっこの「こないろ」。1点ずつ、手漉き和紙の文字盤に色付けするところから職人の手で組み立てられています。岩絵の具とは飛鳥時代からずっと変わらない技法で使い続けられている、世界でも類を見ない美しい絵の具。
幾重にも塗り重ねて表現される岩絵の具の色彩は法隆寺金堂旧壁画や高松塚古墳にも使われており、その高い耐光性により、1300年以上たった今でもあせることなくその美しさを伝えています。

かつて、私たちの身の回りは着物をはじめ、櫛、かんざしなどの装飾品や唐紙、掛け軸、団扇、手箱など、日本古来の色や意匠に彩られてきました。腕時計は日々の時間を計る実用品ですが、そこに、生活道具に心を配ったり、暮らしに彩りを添えてきた日本人の伝統という、もう一つの時間を重ね合わせた見事さがあります。

アクセサリーのように愉しむ、腕時計

このスクエアタイプは、「掛軸」をモチーフとしたデザイン。岩絵具や金箔といった日本画材を用いた腕時計の装いとして掛軸の形を参考に、文字盤とベルトの幅を合わせて一体感を持たせ、厚みも薄く軽やかに仕上げています。また、文字盤の比率は古来から建築や仏像などで多用されてきた大和比になっています。

18世紀以前の日本では、科学的に合成した絵具がほとんど手に入らず、天然石などから絵具を作っていたため、使える色の数がとても限られていました。当時の職人はそのような状況でもなんとか多くの色を手に入れようと、粒子の大きさを変えてみたり、絵具に熱を加えて焼成することで色をくすませたりと工夫して絵具を作り、それらは現在でも日本画の画材として使われ続けています。

今回の【こないろ　 焼群青　スクエア ステンレス　ベルトS-No.8 ブラック】の文字盤にはそんな一工夫をした絵具「焼群青」を文字盤に塗りました。原石であるアズライトを砕いた群青に少し熱を加えて色をくすませることで深い紺色に変化します。非常に高価な絵具で、金よりも高値で取引されていた時代もあり、普通の絵具では出せない深い色彩とザラザラした岩絵具特有の質感をお楽しみいただけます。

時計は、専用の化粧箱に入れてお届けします。岩絵具を使った心ときめくようなアクセサリーでありながら、シンプルかつどんなスタイルにもよく似合う実用性の高いはなもっこの腕時計は、自分へのご褒美や大切な方への贈り物に選びたい逸品です。