
ZUTTOの掘り出し陶器市の中でも人気のイヤープレートと豆皿。今年もイラストレーター 福田利之さん × 波佐見焼 のコラボに新作が登場しました。
ここでは、メルマガで紹介しきれなかった器が生まれる背景・技術・作り手の声 を詳しくお届けします。読んだあと、きっと器を見る目が変わります。
▲2026年の新作イヤープレートのモチーフは、干支である「馬」と、シリーズを通して描かれている「鳥」。
福田さんが描くのは、可愛らしいフォルムながら、それぞれが個性を持つ生き物たち。このプレートのために描き下ろされたイラストが、白磁の上で生き生きと表現されています。ヨーロッパの伝統的なイヤープレートをベースにしつつ、波佐見焼らしい白磁のやさしさと、福田さんの伸びやかな線が調和した一枚は、飾ってよし、使ってよしの便利さ。一年の記念や贈り物として選ばれる理由は、その特別感にあります。
▲豆皿は毎年テーマを変えて描かれる人気シリーズ。
昨年の 春夏秋冬 に続き、今年は 四字熟語 がモチーフです。言葉を動物や植物で表現したユニークな図案は、小さくても存在感抜群。1枚ずつでも、並べても魅力的です。
ここからは、器づくりの裏側を深くご紹介します。
見た目の可愛らしさとは裏腹に、イヤープレートと豆皿は非常に繊細な技法を使って制作されています。その中心にあるのが、高い技術力を伴った陶磁器制作の技法です。
✔︎ 仕上がりを左右する、手の感覚
このシリーズには、はんこを押すように絵柄を転写する技法が使用されており、一見均一に見えますが、実際は職人の技量も大きく影響します。
例えば、版そのものの精度、絵柄を打つスピード、呉須の濃度など。わずかな違いで、濃淡やズレ、揺らぎが変わります。そのわずかな揺らぎこそが、福田利之さんの柔らかい線と見事に調和し、器にやさしい表情を与えているのです。
✔︎ グラデーションは紙の上より難しい。
福田さんのデザインの魅力である濃淡の表現。これを陶磁器で再現するのは想像以上に難しく、版の段階から繊細な調整が必要です。
どこを濃くするのか。
境目をどう柔らかくするのか。
焼成すると色が変わるため、焼いてみないと結果がわからない世界。今年も3回もの試作を重ね、理想の濃淡にたどり着きました。まさに、目には見えない部分にこそ手間が宿る器づくりです。
✔︎ 手書きは不可能ではない。しかし日用品ではなくなるレベルの緻密さ
線の細さも、柄の密度も、じっくり眺めたくなるほど緻密。もしこの絵柄を完全手描きで再現した場合、もはや日用品としては扱えない価格帯になるといいます。
工芸品のような美しさと、日常使いの価格を両立できる、この絶妙なバランスが、シリーズが愛され続ける理由のひとつです。
✔︎ そして、仕上がりの最後を決めるのは「人の目」
最終的には、福田さん自身が現地へ赴き、線の太さ・濃度・印象を一つひとつ確認しながら微調整していきます。何度も焼き直し、ズレや濃淡をチェックしてようやく完成へ。
器づくりは分業と思われがちですが、このシリーズはまさに デザイナー×職人×窯元 が三位一体となった作品です。
普段、知る機会の少ない器づくりの舞台裏、ものづくりの背景を知りたい私たちはこのコラボレーションの気になるあれこれをインタビューしてみました。
Q. コラボレーションはどのように始まりましたか?
●西海陶器さん:
「以前から福田さんのお仕事を拝見していましたが、お取引先のデザイナーとしてご一緒したのがきっかけです。波佐見にも来ていただいた際、陶磁器への関心を伺い、ぜひ制作をお願いしたいと思いました。」
Q.(福田利之さん)波佐見での制作はいかがでしたか?
◾️福田さん:
「伝統技術と新しい技術が混ざる波佐見で、自分の絵がどんな化学反応を起こすのか、とても楽しみでした。結果として絵との相性も良く、満足しています。制作を進めるなかで、波佐見の方々とのカルチャーの違いが面白くもあり難しい部分もありましたが、とても良い経験でした。」
Q.(福田さん)絵柄を陶器に落とし込む際の工夫は?
◾️福田さん:
「職人さんに無理をお願いしながら、何度も試作を重ねました。焼き物は自然が相手なので、多少の個体差はありますが、今回も満足のいく仕上がりです。2年目ということもあり、お互いの信頼と経験が活かされ、1年目よりスムーズに進められました。」
▲初めての制作では、満足のいく仕上がりまで5回はサンプル作成と修正を行ったそう。
Q.どのようにしてこうした作品を作るのですか?日常生活からインスピレーションは得ますか?
◾️福田さん:
「目に入るもの、心が動くもの、全てから影響を受けています。普通の生活の中に少しだけ特別なものを届けたい。自分の絵がどう入り込めるかを、日々考えながら制作しています。」
Q. 呉須が長く愛される理由は?
●西海陶器さん:
「丈夫で扱いやすい磁器に、濃淡や絵柄で多様な表現ができること。この実用性と嗜好性のバランスが優れている点だと思います。日用食器が広く普及した時代に染付が多く使われたことも、現在まで愛される理由の一つではないでしょうか。」
Q. 今回の器はどんな使い方がおすすめですか?
●西海陶器さん:
「福田さんのデザインには普遍性があるため、和洋問わず使えます。食卓だけでなく、アクセサリートレイなどインテリアとしても楽しめます。」
Q.来年も楽しみにしていていいですか?
●西海陶器さん:
「ぜひ続けたいと思っています。」
● 朝のワンプレートに
イヤープレートはトーストやフルーツが映えます。豆皿はジャム、バター、ナッツに。何気ない朝にこそ、この器の良さが際立ちます。絵柄を眺めながらゆっくり朝食をとる時間が、いつもより少しだけ豊かに感じられます。
● 年末のおもてなしに
取り皿やフィンガーフードに。食卓が華やぎます。来客時に「このお皿、素敵ですね」と言われると、つい制作秘話を語りたくなってしまいます。器が会話のきっかけになるのも、このシリーズの魅力です。
● インテリアとして
豆皿はアクセサリートレイに。イヤープレートは壁掛けにも。使わない時も目に入る場所に置いておくと、ふとした瞬間に癒されます。クリスマスや新年に迎え入れる方も多いお皿ですが、結婚や誕生などの記念にも記憶に残る贈り物としておすすめです。
「普通の生活の中に少しだけ特別なものを届けたい」という福田さんの言葉が、取材を終えて改めて心に響きました。この器たちは、まさにその言葉を体現している。日常に溶け込みながらも、ふとした瞬間に「あ、いいな」と思わせてくれる存在です。
器のストーリーを知ると、暮らしの中でふと目を向けるときの愛おしさが変わる気がします。今年のイヤープレートと豆皿が、たくさんの方の食卓に物語を添えてくれますように。
