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【特集】はなもっこのアトリエを訪ねる(後編)

 

前編では、はなもっこの腕時計に使われる日本古来の画材、
「岩絵の具」の特徴と、日本画の伝統について伺いました。

(前編はこちら)

次に見せて頂いたのが、岩絵の具の色見本帳。現存する日本の
岩絵の具メーカーは2,3社だそうです。

 

 

---たくさん種類がありますね。この中から、どうやって「はな
もっこ」の16色を選んだんですか?

 

うーん、何となくこの色とこの色で…と(笑)でも、出来るだけ天
然の岩絵の具を選ぶことにこだわりましたね。新岩絵具(しんい
わえのぐ)と言って、どうしても天然石では表現しにくい「菫」
「紺」などを除いて、古来から伝わる伝統的な岩絵の具を使う
ようにセレクトしています。

 

---腕時計と岩絵の具という組み合わせ。その良さってどんなと
ころでしょうか。


腕時計って、機能があるプロダクトですよね。正確に時間を知
るという機能が求められる道具です。岩絵の具を塗った文字盤
は、色味が経年変化しにくいので、長年使っても見やすさ(視認
性)を保てるというのは一つあると思います。高温多湿の気候に
あった素材なので、表面が割れたり剥がれたりということも少
ないですし。


それと、機能的な時間とは別に、1400年という長い長い時間の
存在を身近に感じられるということでしょうか。日本画にはな
かなか馴染みがないという方がほとんどかと思いますが、機能
を持ったプロダクトと一緒に、日本古来から伝わる美意識を感
じて頂けたら、嬉しいですね。

 

では、文字盤に色を乗せてから、腕時計として組み上げていく
までの流れをお見せしますね。

 


---針を乗せるのは手作業ですか?


自動で針を組み合わせる機械も存在しますが、シーブレーンの
腕時計は全て手作業で行っています。
短針・長針・秒針の順に乗せていくんですが、それぞれの針が、
全て文字盤と平行に並ぶようにします。

 

 

---緻密ですね…。きちんと動くか心配になってしまいそうです。


そうですね、針同士が擦れてしまうと時計として機能しないの
で、一番神経を使う繊細な作業だと思います。針を乗せて竜頭
(りゅうず)をセットしたらムーブメントを取り付けて、ケースで
蓋をするという流れです。
時計を組み終わった後は、1週間の間、実際に時計を動かして動
作確認をします。表にして、裏にして…と、不具合がないか
チェックした上で、ベルトを通して完成です。

 

1:ガラスケース/2:時計の針/3:竜頭(りゅうず)

 

ストライプ模様をあしらった時計の針。これも全て手作業。

 

出番を待つガラスケース

 

組み立て前。丁寧にガラスを磨く。

 

時計の心臓、ムーブメントを取り付けるところ。

 

ZUTTOオーダー分の時計。1週間の動作確認を終えて出荷を待つ。

 

水晶の原石と岩絵の具が窓辺に。

 

短針・秒針・長針を組んだところ。文字盤と全ての針が平行に並ぶ。​

 

時計の組み立ては全て1人の職人が手作業で行っている。

 

 

 

---文字盤にベルト、針の組み立て、と全て手作業の工程を見せ
て頂きました。本当に手作りの腕時計なんですね。

 

金沢という土地柄、手作りというのは身近な存在かもしれません。

同じ石川県には、九谷焼や輪島塗りなど工芸も盛んですし。
このアトリエの側に金沢工芸美術大学という美大があって、
そちらの学生さんをベルトや文字盤の職人として受け入れています。

 

 


---今後、ブランドとして新しい取り組みは考えていらっしゃい
ますか?

小さな工房なので一度に作れる数は限度がありますが、今までにない
モチーフ、素材も少しずつ取り入れて行きたいですね。例えば、無垢
の真鍮で作った時計ケースを使ったり、古典日本画の色彩をモチーフ
として取り入れたり。日本に昔から伝わる美意識を腕時計の世界観の
中に落とし込んでいきたいなと考えています。

 

 

 

そして取材の終わりに、職人さんのご好意で
特別に腕時計の製作体験をさせて頂けることに。

 

1 ) 文字盤にインデックスを彫る
2 ) 針を乗せる
3 ) ケースを組み立てる
4 ) ベルトを付けて完成

 

 

文字盤にインデックスを彫り込んで、
何種類もある針から気に入ったものを選び、組み立てた腕時計。
思いがけず、素敵な経験をさせて頂きました。

 

 

取材の帰り道、シーブレーン代表の井波さんが
駅まで車で送って下さったのですが、道すがら
昔から残る茶屋街や10周年を迎えた21世紀美術館など
金沢の名所を教えて下さいました。

そこは、ずっと受け継がれてきた
古いものと新しいものが上手に同居した街でした。
はなもっこの文字盤とガラスケースの間には
そんな金沢の空気が閉じ込められていたんですね。

目に見えない時間を可視化する時計というプロダクトは
考えてみれば、ちょっと不思議な存在です。
文字通り機械的というか、時に人工的で少し冷たい感じさえします。

でもそこに、岩絵の具をあしらい目に見える色というエッセンスを投じることで、
淡々と進む時間とは別の、長い長い歴史という時間を感じることが出来る。
全てが手作りであることで、ぐっと温かみが増すように思います。

今回は、その一連の流れを見せて頂いた訳ですが、
職人さんの指先の繊細さには目を見張るものがあります。
そして、まるで歯医者さんが使うようなエアーが出る機械、
ふうっと息を吹きかけたらどこかに行ってしまうんじゃないかと
思うほど小さな部品などなど、ものづくりの現場を見ることで、
製品に対する愛着も深まりました。

そんなアトリエから大切に持ち帰った腕時計は、
今も1秒ずつ淡々と時を刻んでいるのでした。

 

 

左:井波さん(シーブレーン代表) 右:牛島さん(職人、画家)

 

 

◇はなもっこについてはこちら

投稿者: 斎藤 日時: 2015年03月26日 00:00 | permalink

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