ずっと使いたいモノ、置いてます。

暮らしを見守る木製オブジェ

軽やかにぶら下がるモンキーと、静かに佇むホース。どちらもカイ・ボイスンが手がけた木製オブジェで、1950年代から多くの家庭に迎えられてきました。金属工芸を出発点とした彼は、戦後の暮らしに寄り添う日用品を求め、木を素材にした玩具づくりへと踏み出します。動物の特徴を誇張せず、余分を削ぎ落とした素直なフォルムは、時代が変わっても自然と日常に馴染み、今なお多くの人を惹きつけています。

美しく機能的な形であること

カイ・ボイスンが木製玩具の制作を始めたのは1930年代のことでした。当時、彼が重んじていたのは子どもにも大人にも開かれた、美しく機能的な形であること。動物を写実的に再現するのではなく、その動きや性質を簡潔なラインに置き換えることで、インテリアとしても美しい造形を生み出しました。現在も多くのシリーズが愛され続けているのは、こうした普遍性を大切にしたデザインの積み重ねによるものです。

代表作のひとつであるモンキーは、1951年に発表されました。長い腕や、掛けやすい形に整えられた手首は、もともと子どもの身の回り品を掛けるフックとして考案されたもの。現在のモンキーは玩具として作られているため衣類を支えるほどの強度は持ちませんが、誕生の背景を知ると、遊び心と実用性を同時に思い描いたボイスンの視点が見えてきます。首・肩・股関節・手首・足首が可動し、座らせたりぶら下げたりと、置く場所ごとに異なる表情を見せてくれる点も魅力。接合部にはゴムや紐が用いられ、可動のしなやかさと耐久性が両立されている完成度の高いプロダクトです。

一方、ホースは、モンキーとはまた違った佇まいを持つ木製オブジェです。なだらかな背中のラインや丸みを帯びた脚の形、やさしい眼差しを感じさせる彫り込みなど、ボイスンらしい簡潔な造形が随所に宿っています。手に取ると木肌の滑らかさと重量のバランスが心地よく、思わず角度を変えて眺めたくなる仕上がりです。干支の置物として飾るのも素敵ですよ。どちらも玩具という枠に収まらず、家族の成長を見守るように長く飾れる存在として、今もなお多くの家庭で愛されているアイテムです。

時代を選ばない形

デンマーク王室御用達としても知られ、世界でその品質が認められるブランドKay Bojesen（カイボイスン）。美術工芸のパイオニアであるカイ・ボイスンは4年間にわたってジョージ・ジェンセンで修行を積んだのち、銀細工師として独立しました。1920年代当時のホルムガード社のクリスチャン・クラウベルと共に、選りすぐりのデンマークデザインをセレクトして販売する革新的なデザインショップ、Kay Bojesen（カイボイスン）を創設します。デンマーク戦時状況下、カトラリーの素材である銀の供給が難しくなったことから、当初工業デザインの素材としては珍しかった「ステンレス」を用いてカトラリーをデザインしました。このカトラリーがミラノトリエンナーレから3年連続で最優秀賞を受賞。「究極のカトラリー」として世界中の多くの人を魅了しました。

Kay Bojesen（カイボイスン）の才能は金属を扱うだけにとどまらず、1930年代から制作を開始した木製オブジェの数々は、ブランドの顔となっています。様々な人気木製オブジェを作り出すKay Bojesenはその信条に「木製の動物は本物の動物の真似であってはならない」と掲げ、デザインアイコンとなっているモンキーをはじめとする素朴で愛らしい木製品は、世界中の人から愛されています。