福井県鯖江市の谷口眼鏡(たにぐちがんきょう)さんが作る、サングラスのファクトリーブランドtesio(テシオ)。 現在期間限定でラインナップを広げてお取り扱いしています。今回は福井県鯖江市にある谷口眼鏡さんへお伺いして、サングラスの製造風景を見せていただきました。その製造工程は想像していたものより何倍も職人さんの手間暇がかかっており、まるで工芸品のようなサングラスでした。
目次)
2、眼鏡・サングラスフレームの基礎知識「眼鏡・サングラスのフレームを知る」
4、インタビュー「日本人に合うサングラスは、培われた技術と経験から」
長年の眼鏡ユーザーでもある商品担当スタッフM。これまで色々な素材の眼鏡を使ってきましたが、使っていた眼鏡を紛失してしまったことをきっかけに、今年新しい眼鏡を購入しました。これまでの眼鏡は数年でフレームの表面加工が剥がれてしまうこともあり、長く使えないものを選んでしまったなと後悔することもあったのですが、今後も長く使えるいいものを身につけたいと思い、店員さんに相談して初めて選んだのが「アセテート素材」のフレームでした。
まずかけてみて感じたのは肌あたりの良さ。プラスチックでありながら決して固い感じがなく、掛けていて滑らかで心地良いのです。そしてもうひとつは、素材特有の透明感や色。掛けてみると今まで画像で見ただけでは分からなかった肌馴染みのよさがありました。
今回ご紹介しているtesioのサングラスにもこの福井県鯖江市で作られているアセテート素材が使われています。
素材となっているアセテートは綿花やパルプを主原料とした植物由来のプラスチック生地。加熱することで手で曲げられるほどの柔らかさになるので、使う人の顔に合わせて簡単に調整ができる素材です。その反面、その柔軟性によって使っているうちに型崩れが起きることもありますが、再び調整することで元通りに。表面についてしまった傷は、再び研磨することでまた綺麗な状態に戻るという点も、顔の印象を左右する眼鏡やサングラスには嬉しい素材なのです。
▲KISSO | イヤーカフ 2個セット(BOSTON BLUE)
同じく鯖江のブランドKISSOが作るアクセサリーからもよくわかるのですが、アセテート生地はその鮮やかな発色や奥行きのある柄も特徴。使用する生地によっては同じデザインで同じ場所で作られたフレームであっても1本1本、柄や色の濃淡が違うので世界に一つだけと言っていいフレームが生まれるのです。
上がメタル枠、下がプラスチック枠。
眼鏡やサングラスのフレームには大きく分けて、「メタル枠」と「プラスチック枠」の2種類があり、tesioのサングラスのフレームはプラスチック枠に分類されています。
通常プラスチックというと、金型を使ってポンポンと大量に生産していくイメージがありますが、眼鏡の場合それはプラスチック枠の中でも「成形枠」と呼ばれる金型を使って作っていくものになります。大量生産により安価なものが多いのですが、顔に合わせたフィッティングができないことや、傷や歪みが起きた場合にはなかなかお直しができないというデメリットも。
一方、tesioのプラスチック枠は、アセテートの板をフレーム1枚に必要な大きさにカットしてから、削ったり、研磨を繰り返すことで1本のフレームを完成させる、「切削加工」で作られています。鯖江で作る眼鏡には様々な素材がありますが、中でもこの切削加工で作られるセルロイドやアセテートの眼鏡やサングラスフレームは、長年受け継がれてきた高い技術を誇るものなのです。
福井県鯖江の街から少し離れた、日本の原風景に近い景色が広がる場所にある谷口眼鏡さん。1957年からプラスチックの眼鏡フレーム一筋に作り続けてきたことで培った技術と豊富な知識があるファクトリーです。
眼鏡の産地として知られる、福井県鯖江市。分業制で作られており、街を車で走っていると至る所で眼鏡関連の会社や工場を見かけます。鯖江市内の眼鏡関連従事者は約6人に1人と、まさに「眼鏡のまち」なのです。
多いものではなんと200以上の工程を経て作られるプラスチックフレーム。それではtesioのサングラスができるまでを見てみましょう。
デザインが決まったら、まずは生地やパーツの選定を行います。
元になるアセテートの板は、大きいものだとこのくらいの大きさのものも。まずはこの板を眼鏡サイズに切り分けて加工をしていきます。
谷口眼鏡さんには、眼鏡の幅に切り取られた様々な色柄のアセテートの板が保管されていました。
メガネの製造工程は分業制なので、鼻の部分にカーブをつける工程、内径、外形を削る工程などを経て谷口眼鏡さんにフレームが戻ってきます。
研磨に入る前に、鼻パッド貼りを行います。tesioのHAREとSORAはこの貼蝶タイプと呼べれる、フレームと同じアセテート素材の鼻パッドを溶着させているフレームです。境目がわからないほどフレームと一体化していますが、実は別でくっつけているパーツ。接着剤を使用するのではなく、パーツを溶着させているので美しく壊れにくくなります。
そして次はヤスリがけ。まずは機械で取りきれない角や、ドリルなどの削り跡を手でヤスリをかけて取っていきます。ただ、これは複数ある研磨の工程の中のまだまだ最初の段階。まだ全体的に傷があり、角が立っているので、セル枠特有のツヤや透明感もこの段階ではありません。
次の「バレル研磨」と呼ばれる工程は、スタッフが想像していなかった工程。八角形のタンクの中に、フレームと一緒に研磨剤と、プラスチックや木、竹製のチップを入れてガラガラと回します。長時間回していくうちに、タンクの中でフレームと研磨剤やチップがこすれ合って、フレームが均一で滑らかな表面に近づいていきます。フレームのデザインやその日の気温、湿度によって研磨剤の量や回す時間を変えるそうで、ここでも職人さんの経験や知識が必要になってくるのだそう。この工程はチップの種類や時間を変えて、大きく3回に分けて行われています。
お次は、フレームとテンプルをつなぐための前枠蝶番をつける工程。このようなパーツはネジで穴を開けて取り付けているものだと思っていましたが、アセテートの熱で柔らかくなる特性を生かして、パーツに電気を流し、熱くなった状態で埋め込んでいます。先ほどの鼻あての部分もそうでしたが、アセテートの素材の特性を生かして、どの部分も接着剤などを使わずに作られているのです。
耳にかかるテンプルも大切なパーツ。耳に沿う絶妙なカーブは、こちらも1点1点職人さんの手仕事によるものです。tesioのサングラスの場合は、テンプルの上下幅を広くすることで、肌に触れる面積を大きくして摩擦によってずり落ちにくくする工夫がされています。
また、テンプルは温めることで形を変えることができるので、ひとりひとりにぴったりのカーブに後から調整することも可能。これもアセテートのフレームだからこそですね。
その後組み立ててから、フロントとテンプルのつなぎ目を手でヤスリがけしたのちに、再び今度は職人さんの手で機械を使った研磨の工程です。
羽布(バフ)と呼ばれる布を使って磨き上げていきます。泥を使って荒磨きをしてその後仕上げ磨き。ここは眼鏡の印象を決めるとても大切な工程で、職人さんの技術とセンスが最も必要とされるのだそう。ここでの磨きの工程を経ることで、セル枠特有の、光沢感や奥行き感が生まれます。
そしてレンズをはめた後、最後に刻印をしてフレームの完成。こちらももちろん手作業です。小さなロゴにたくさんの作り手の思いが詰まっているようです。
「手で作る。」クラフトサングラス
その言葉はぼんやりとしたイメージでしかなかったのですが、工程を見せていただいたことでよりその意味を理解できました。ひとつのサングラスにこれだけの手間暇をかけて作られているというのは驚きであり、丁寧に作られたものだからさらに大切に長く使おう、そんな思いにさせてもらいました。
今回は谷口眼鏡の永山さんにお話をお伺いしました。
谷口眼鏡では「よりそう、めがね」をコンセプトに掲げて、掛け心地を大切にした眼鏡・
サングラスを製造しています。大切にしていることのひとつが「ほどよく壊れる」ということ。不意に倒れたり、ぶつけたりした時の衝撃に対してきちんとフレームが歪み力を逃すことで、目や顔を守って高い安全性を確保しているのです。
はい。フレームをガチガチに頑丈に作ってしまうと、フレームが壊れずに目や顔などを傷つけてしまうので、それが起きないように衝撃を逃す作りになっています。特にキッズ用の眼鏡では大切なポイントなんです。
谷口眼鏡さんではより安全性が重視される、キッズフレームの製造も行っています。
まぶしい日差しや年々強くなる紫外線、目に良くないことは分かっているんだけど、ついついそのままにしてしまう。でも、サングラスって手を出しにくい…。掛けてみるけどしっくりくるサングラスが見つからない。そんな方が多く、実際掛けている人も掛け心地に満足していない方が多かったんです。
それはサングラスといえば海外のブランドが多く、鼻が高く彫りが深い欧米人などの顔を基準に設計されているので、鼻が低く頬骨が出ていて平らな顔の私たちがそのまま掛けるとフレームがズレてきたり、まつ毛が当たる、頬骨に当たってしまうなど合わないものが多いからなんです。日本人が心地良いと感じるつくりで、日常的に掛けやすいサングラス。無いのなら自分たちで造ってしまおうと、2019年に企画が動き出しました。
服や靴のように、生活の中で当たり前に使える心地良さとデザインを大切にしています。
昔から選ばれ続けているスタンダードな形を基本にしていて、簡単に分けると、四角くシャープに見えるウェリントン系、丸くて優しい印象になるボストン系の2つ。さらに、少し角を落として丸みをつけることで顔に馴染む柔らかい形になるので掛けることで個性を出すというよりも、顔に馴染ませる様に掛けるサングラスというのが正しいのかもしれません。
Q1、3万円台と2万円台のモデル違いはなんですか?
使用している素材によって、価格が異なります。
SORA、HARE:プラスチックレンズ+アセテートの鼻パッド
MACHI、YAMA、NAMIKI、MINAMO:ガラスレンズ+チタンパッド
Q2、ガラスレンズとプラスチックレンズの違いはなんですか?
見た目には大きな差はありませんが、レンズを通して見ると違いが分かります。
ガラスレンズの良いところは、透明度が高いということ。長く眼鏡を使用していたらレンズが曇ってきたという経験がある方もいらっしゃるかもしれませんが、ガラスレンズは透明感の高い状態をより長く維持できます。さらにtesioで使用しているガラスレンズは、70年以上も続く大阪の老舗硝子工場で製作されたガラスで、カメラレンズや車のフロントガラスに使用されるほどの優れた光学性能や耐久性を備えているもの。薄くて軽くかつ割れにくい、紫外線による経年劣化もほとんどないのです。長く良い状態を保ちたいという方には、ガラスレンズがおすすめです。
一方プラスチックレンズは、ガラスレンズに比べて軽いというのが大きな特徴です。また、プラスチックレンズはUVカットのコートをかけられるので、色が薄くても可視光線透過率(自然光がどの程度レンズを通すかを示す数値、低いほど光が入らない状態)が高い状態を作れます。機能性を重視したいという方におすすめしたいレンズです。
「一生もの」
そのために欠かせないのは、修理ができるということではないでしょうか。鞄に入れて持ち歩いたり、屋外のレジャーシーンで使うことが多いサングラスはどうしても壊れたり傷がついてしまうことがありますが、tesioはかかりつけのお医者さんのように、傷や歪みなど困ったことがあればいつでも相談ができます。サングラスブランドが直接リペアをするのは大変稀なことなのだそうですが、素材選びから設計、製造、販売を一貫して行っている工場だからこそできる対応なのです。
商品購入時のパッケージがそのまま修理依頼の際の梱包資材になります。あとは、同梱されている問診票に記入して送るだけ。スムーズに送れるので、「ちょっと調子が悪いけど、いつか修理しよう」とそのままにしておくことがなくなります。
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